ブラック企業と鬱化する社会 その1 ブラック企業はブラック消費者が作り出した!?

何かと話題になっている「ブラック企業」ですが、数年前から映画や書籍のタイトルに使われていることから市民権を得つつあるようです。
「ブラック企業」とはなにかというと、労働者の待遇を考慮せず利益追求を第一とする企業のことを指します。
一般的にタダ働きさせる企業ということになるのですが、そこに最近ではパワハラが追加されることが多くなっています。

2008年6月にはワタミ社員だった26歳の女性が飛び降り自殺をしたことで、飲食店の「過酷な労働」が明るみに出ました。以下は2013年6月11日の日刊サイゾーの記事です。

▼参院選出馬の陰で……飛び降り自殺から5年「金なら払う」終わらないワタミ過労死事件の今

わたなべ美樹(ワタミグループ創業者)公式サイトより  ワタミ株式会社取締役会長・渡邉美樹氏が、自らのブログで「『ブラック企業』と呼ばれることについて」というタイ…

 ワタミ株式会社取締役会長・渡邉美樹氏が、自らのブログで「『ブラック企業』と呼ばれることについて」というタイトルの記事を投稿したのは先月31日。離職率、給与、時間外労働時間、メンタルヘルス率などの数値をもとに「ブラック企業」の謗りに対して反論を行っている。折しもその2日前には、今夏に予定される参議院議員選挙への出馬を表明した渡邉氏。この記事を投稿した裏には、選挙を前に、なんとしても自身のイメージ改善を図りたいという意図が見え隠れする。

 明確な定義は存在しないものの、「ファーストリテイリング」「ウェザーニューズ」「ゼンショー」など、ブラック企業と目される企業は多い。にもかかわらず、ワタミがその代表格とされるのは、5年前に起こった従業員の過労死自殺事件の記憶が尾を引いている。

 2008年6月、横須賀市内のマンションから、26歳の女性が飛び降り自殺をした。飛び降りたのは、ワタミ京急久里浜店の社員であった森美菜さん。同年4月にワタミに入社し、わずか2カ月あまりで飛び降り自殺を図るまでに追い込まれた。遺書は残されていなかったものの、手帳には「体が痛いです。体が辛いです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」という悲痛な文字が綴られていた。

 1カ月の残業時間は140時間。彼女は国が認定する80時間の過労死ラインを大幅に超えて働かなければならなかった。さらに、家に帰れば課題である渡邉美樹氏の執筆した著書の読書感想文を書かねばならず、休日には介護施設などでの“強制的”なボランティアを強いられる。満足に睡眠を取ることもできないまま、ワタミでの2カ月間は過ぎていった。6月頭には母親と電話のやり取りで、しきりに「眠たい」「疲れた」と口にしていたという。そして6月12日、自宅近くのマンションから飛び降りた。肩掛けのバッグに入っていた財布からは、亡くなる数時間前に購入したシャンプーやリンス、そして「会社に行くため」に必要な目覚まし時計のレシートが見つかった。

 日用品を買っていたということは、おそらく、彼女は「自殺をする」という強い意志を持っていたわけではないだろう。もしかしたら、飛び降りながらも、彼女は「自殺」という意識を持っていなかったかもしれない。睡眠不足の朦朧とした意識の中、正常な判断力を奪われた彼女は、マンションの手すりを越えた。彼女の死から4年を経た2012年、労災認定が下され、彼女の死は正式に「過労死」として認定された。

(紹介終了)

ブラック企業の何が問題なのかというと、単に残業させて残業代を出さない、休日に出勤させる、能力の低い社員に体罰を与えるといったことだけではありません。
そういうのは昔からどこの会社にもあったからです。

江戸時代には究極のブラックとも言える丁稚奉公というのがあったし、今でも職人の世界では徒弟制というものがあります。それがなぜ今になって「ブラック」と呼ばれるのかというと、昔と違ってそれがうまく働かないからです。

例えば丁稚奉公というのは、小僧が商店にほぼ無給で働きに出て、商売のノウハウを習います。
やがて大人になれば暖簾分けをしてもらい独立をするか、残って養子に入り番頭に出世することだって可能です。
衣食住とビジネススクールを兼ねていたわけです。
滅私奉公とはいえ、きちんとやっていれば現代のサラリーマン以上の見返りが期待でき、あぶれることもなかったという意味で言えば「グレー」なのです。

ところが、現代では残業しようが、滅私奉公しようが、そもそもの母体である企業が長く存続しているか分かりません。この苦労が数年後に報われるかの保証はなく、安働きをすれば要求はさらに悪化していきます。
企業の寿命が短くなっているため、延命しようとすれば非常に多くの労力が必要となるのです。

それは顧客においても同じで、顧客の収入が少なくなっているのであれば、企業から出来るだけたくさんのサービスを引き出そうと努力します。サービスをしても満足度を上げにくくなっているのです。

つまり、企業のためにタダで働いても長い目で見れば自分の為にならず、さらには顧客を一時的に喜ばせても長続きはせず顧客満足度は低くなり続ける、ということです。
これは言ってみれば、循環系のウロボロスであり、右手から左手に持ち替えただけで何も変わってはいない、ということです。

自分の尾を飲み込むヘビ(ウロボロス)
自分の尾を飲み込むヘビ(ウロボロス)

昔は手に職があって、がむしゃらに働けばなんとかなりました。社会に成長する余地があったのです。
80~90年代はとにかく顧客に耳を傾けて手厚くサービスを重視していればよかったのですが、リーマン・ショック以降世界経済が低迷し、成長が鈍化した社会ではサービスだけでは利益が上げられなくなったのです。

理由は簡単で、消費者の収入が減ったからです。
お客がお金を出さないというより、持っていないのでサービスをいくらしても出せないものは出せないわけです。
そこでどうするかというと、低価格戦略をとらざるを得ません。
売価が低くなっても、製造や仕入れコストが下げられなければどうなるかというと、交渉が可能な人件費にしわ寄せが来るのは必然だと言えます。

皮肉なことに、ブラック企業というのは消費者にとっては限りなく「ホワイト」なのです。
労働者の待遇を考慮せず利益追求を第一とすることがブラック企業というなら、労働者の利益を顧客に回しているということだからです。
なぜ労働者の利益ではなく顧客の利益を最優先するかというと、労働者を厚遇してもお金にはならないためです。労働者を残業せず帰らせても収入はならないのです。リストラすれば人件費は浮くかもしれませんが、プラスにはならない、というのがポイントなのです。

つまり、ブラック企業と呼ばれるワタミやユニクロも消費者には高い支持を得ている、ということです。ただし内部から見れば非常に理不尽だということです。
たまたま代表としてワタミやユニクロという企業が出ているだけで、本当のところはブラック企業を作っているのはブラック消費者である、ということです。
直感に反するかもしれませんが、顧客第一主義を貫いて行けば、その責任は顧客にあるのです。
顧客の要求に最大反応をしていれば、そうなっていきます。

それが今までは成長の余白によって顕在化しなかっただけで、鈍化した今、問題になっているのです。
なぜ問題になっているのかというと、このブラック企業やブラック体質という問題が、実はグローバル化やこれから日本が大きな決断を迫られるTPP交渉にも関係しているからです。
このことは世界や日本が抱えている問題の縮図なのです。

続く。

【引用元 goo イメージサムネイル】

関連記事