腐りゆき消える通貨 ゲゼル通貨はデフレ社会を変えうるか? その2 負の経済連鎖

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前回はヴェルグルの奇跡を紹介しました。
ヴェルグルの奇跡はシルビオ・ゲゼルが発案したゲゼル理論である自由貨幣を応用したものでした。

ゲゼル理論の骨子は、

『お金は老化しなければならない』
『お金は経済活動の最後のところでは、再び消え去るようにしなければならない』

という通貨に腐敗性を持たせるというユニークなものでしたよね。

ヴェルグルのミヒャエル町長は不景気の原因は、「不景気はお金が貯めこまれ循環が滞っているため起きている」と考え、毎月価値が1%減額される地域通貨を考えだしました。
これによって、ヴェルグルではたった4ヶ月で10万シリング分の公共事業を実施し、税の滞納は消え、税収は以前の8倍になり、30%を超えていた失業率は低下し、ほぼ完全雇用を達成したと言われています。

そこで注目したいのが地域通貨ではなく、経済を循環させるアイデアは「負の経済連鎖」にある、ということです。
社会学者は地域通貨の流用性に着目すると思いますが、それ以上に面白いのは貯めこまれたお金を循環させる方法です。

ヴェルグルの奇跡には、この可能性の示唆の方が興味深いのです。
つまり、お金が老化、最終的には消滅する場合、消費者はそれをいち早く使いきろうとする、ということです。
この負の経済連鎖の仕組みが、経済の流動性を生み出していると考えられます。

考えてみればそりゃそうですよね。無くなるのなら使った方が得なんですから。
ただし、問題は腐敗するスピードというかバランスは重要です。
例えば、いつ価値が消滅するかが分からない乱数的な減額方法や、ある期限になると一気に価値が下がるような仕組みだと、消費者はこの通貨を不便と考えて、そもそも使いたいとは思わないでしょう。

ヴェルグルの地域通貨だった『労働証明書』は、このような仕組みでした。

1.スタンプ(印紙)が押されていないものは使えない
2.毎月額面の1%が減額される
3.その価値は通常の通貨であるシリングと同価値である
4.シリングで買えるものと同じ物が手に入る

ある特定のものを買うためだけにしか機能しないと、そもそもこの地域通貨が広まらない可能性があります。
多くの協賛してくれる企業と商店を抱え込むことで地域通貨が浸透し使われることになります。
また、地域通貨が使えるエリアが限定的で、地産地消的であるという点です。
これによって、その地域内だけで物凄い経済循環が起きるわけです。

では、例えば、この仕組をネットショップのマーケティングとして利用できないかと考えてみます。
その場合、考えられるのがポイントショッピングです。

楽天市場やヤフーショッピングなど多くのネットショップで使われているポイントを利用します。
普通ポイントは、購入した時にだけ取得率に応じて発生します。
よくあるのは100円で1ポイントです。1ポイントは1円の価値となります。

このポイントショッピングを応用して、このようにします。
そのネットショップのメンバーにポイントを一斉に付与します。
その付与されたポイントは、毎月一定率で減額します。
メンバーにとってはタダ同然で手に入ったものですから、貯めておくよりは使った方がお得です。
この単純な仕組によって、経済循環は起きるのではないか? というわけです。

ヴェルグルのような地域通貨は異なりますが、要するに手元にあるものが徐々になくなっていく、ということが大きな動機になり得る、ということです。
商品の価格を顧客の財力によって変動させる、というのは一見理に適っているような気がしますが、実際にやるとクレームの嵐となります。

しかし、ポイントを付与して徐々に減らすという仕組みであれば、結果的に商品価格は変えずに購買ハードルを下げることができる、というメリットがあります。
具体的にどのくらいポイントを付与して、どのくらいのスピードでポイントを減らして行くかについては実験をしていないので明確な答えは出せませんが、定期的にセールスを掛けるのであれば平均購入単価か、平均売価の2割か3割を付与し、毎月1%ずつ減らす、というのは有効な手段かもしれません。

セールスを繰り返すと、顧客のロイヤリテイはどんどん下がっていき、正価で売りにくくなってしまいます。
顧客によっては大きく得する人とそうでもない人がいるかもしれませんが、全体的な売上として利益が出るのであれば、この方法は非常に大きなヒントになると思われます。

続く。

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