邪悪になるGoogle アンドロイドの野望 前編

つい先日話題となり、日本でもニュースになったGoogleのプライバシーポリシーの変更。これはいったい我々にどのような影響があるのでしょうか?

▼Google プライバシーポリシー変更

簡単に説明すれば、Googleは3月1日以降にGoogleアカウントにサインインした状態でGoogleのサービスを利用すると、その利用情報が他のサービス上でも使われるようになり、ユーザーは匿名性を一貫して失わう代わりに、より質の高いサービスを横断的に受けることができるようになる、ということです。

例えば、Googleが提供しているGmailがあるかと思いますが、Gmailで送受信するメッセージの内容は通常は秘匿されます。
しかし、プライバシーポリシーが変更になったことで、メッセージの中身と送信先をヒモ付けて、広告を出すことができます。

例えば、2月にGmailを使っている彼女が彼氏にメールをしたとします。
そのメッセージに彼氏が返信をしたとします。
すると彼女のGmailにはバレンタインデイのチョコの広告が表示されます。

ここまではなんだそんなことかと思うかもしれませんが、プライバシーポリシーが変更になったことでこんなことができるようになります。

まず彼女のIPアドレスやホスト情報から、彼女のプロバイダー情報が判明します。

ここで彼女の住む地域が分かります。同様に、彼氏の住む地域も分かります。
地域が分かるとその世帯の平均年収が分かります。

つまり、平均年収あたりのプレゼント予算も分かります。
さらに、検索履歴やこれまでのGmailのやりとりなどから、職業や趣味、性癖、相手に対する感情や距離感までも解析されます。
利用時間からいつが休日なのかとか、睡眠時間などのライフスタイルも分かります。

アンドロイド携帯を使っていればGPS情報が筒抜けです。
いつどのようなタイミングでメールやメッセージのやりとりをしているのかが分かります。

Google日本語入力(IME)を使っていればよく使う文章表現からあなたの知能が分かります。Google+に加入していれば人脈から交友範囲まで分かってしまいます。
その彼氏が本命かどうかも分かるというわけです。
逆のことが彼氏側で行われます。

名前からネット上の評判も分かります。

ブログを開設していればそれも分かります。写真の入手も容易です。

個人情報の蓄積度合いでいったらGoogleが世界一の企業になると思います。
下手をすると親よりも自分のことを知っている企業になる可能性だってあるのです。

しかし、悪いことばかりではないとGoogleは主張します。
世の中はモノと情報に溢れています。本当に必要で欲しい情報がなかなか手に入らない状況です。

複数のサービスを連動し、徹底的に個人情報を分析することで、不快な広告を減らし、必要な時に必要な情報に触れる可能性が高くなります。
普通であれば見逃してしまうであろうチャンスをGoogleは気付かせてくれる可能性があります。
ユーザーと企業を最短で結ぶことで、無駄を省き不快を減らせると考えているわけです。

これについてどう思うかについては、Googleはあくまでも無料なので「嫌なら使わなければいい」だけです。
これが多くのフリー()サービスを展開する企業の本音です。
「嫌なら使わなければいい」というのは結構ややこしい問題ですよね。

そもそも無料なので嫌なことがあっても我慢するしかないのです。
お金を払っていないので消費者の権利というものが使えません。
サービスの利用料が0円なので価格面では最強です。
価格競争で言えば0円以上は有り得ません。
無料なのに利用するとメリットがある、というのがミソです。

無料なのに使えば使うほどメリットがあるということは、言い方を変えれば使えば使うほど得をする、ということです。

この得をする、というのは目には見えませんが、実質的にはサービスからお金(価値)を受け取っているのと代わりはありません。
使えば使うほどお金(価値)が貯まるのがポイントなのです。

だから、いざ不満があって別のサービスに乗り換えようとすると、これまで貯めたお金(価値)があるので実質的には損失です。
長期に渡って利用している依存度が高いユーザーほど不満はあれど、損失回避性によって移行がスムーズに行えないのです。

例えば、Gmailを利用していていざ止めるとなると、友人知人にメールアドレスの変更を告げなければならないし、これまでの受信メールをなんらかの方法でコピーしなければなりません。
タダより高いものはない、と気が付きます。

では、Googleに対抗するサービスはないのか?
最近注目されているのがFacebookです。
日本では実名制のSNSということであまり流行ってはいませんが、Facebookは世界で8億4500万人のユーザーを持っています。
つまり、8億4500万人分の個人情報を保持しているということです。

いままでFacebookは慈善事業的な側面があり収入面で貧弱だったのですが、ユーザーの属性に応じたターゲット広告を出すようになり売上を順調に伸ばしています。
2011年の売り上げは37億ドル。うちの85%が広告収入となっています。

同じく広告を主な収入源としているのがGoogleです。
つまり、Facebookの台頭はGoogleにとって脅威になるのです。
ネットは無限でも、広告主は有限であるため、広告スポンサーの取り合いは死活問題です。

FacebookはSNSなのでログインをしないとサービスを受けられないクローズドサービスです。一方、Googleはログインしなくてもサービスを使えるオープンサービスです。
結局、Facebookのやっていることは、世界は広いが世間は狭い、なのです。

例えば、世界人口が70億人いようと、実際に繋がる必要がある人はごく僅かです。
利用できるサービスは何百万あろうと実際にそのユーザーが使うのはごく僅かです。
どんなにネットに情報が溢れていようとも、そのほとんどはコピーであり、その信憑性は知っている人に聞くに優るものはありません。
いいか悪いかは使ったことがある人に聞けば済みます。

Facebookは知っている人同士が最優先で繋がることで、緻密なネットワークを持っています。そのネットワーク同士がさらに繋がることで、属性を維持した整然としたネットワークを構築しているのです。

どういうことかというと、基本的に実名制なのでユーザー情報が属性分けされているのです。属性分けというのは、性別や職業、趣味、学歴といったカテゴリに分けられているということです。
属性分けされているということは、広告を出すには非常に便利なのです。

Googleは今まで情報収集と情報分析の分野でネットをリードしてきたダークホースです。ネットをロボットで巡回し情報を集め、解析し、分類し、関連付けを行い検索結果に反映させる。
検索結果が正しいと広告を正しく表示させやすくなります。
広告主は費用対効果が高いのでGoogleにお金をどんどん落とします。
Googleがこれまでやってきたことが、宇宙から地球を観測することであるならば、Facebookは手の届く範囲で地球を観測することなのです。

自分の知っている範囲で、自分の交友範囲で、自分が行動する範囲で、自分の興味のある範囲でユーザーが繋がっていれば、大抵のものは収まるというわけです。
大きなネットワークはいらず、小さなネットワークで意外と十分ではないか? ということです。

皮肉なことにGoogleが理念として挙げている「世界中の情報を整理すること」というのは、Googleが宇宙から地球を大げさに舐め回している間に、Facebookがやってしまった、というわけです。

もちろんFacebookはGoogleよりも情報収集や解析能力はないかもしれませんが、前述したように「世界は広いが世間は狭かった」のです。
大げさなサービスをいくつも立ち上げなくても、「世界中の情報を整理すること」は可能だったのです。

なぜならば、その人にとっての世界とは、その人の経験に等しいからです。
世界は自分のレベルに応じた姿でしか見えないのです。

中編に続く。

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