iPS細胞の明るい未来と怪しい未来

2012年10月8日。京都大iPS細胞研究所長の山中教授がノーベル賞確定というニュースが話題になっています。

▼ノーベル賞:医学生理学賞に山中伸弥氏 iPS細胞作成
http://mainichi.jp/select/news/20121009k0000m040010000c2.html

▼iPS研究所に倫理専門家を…山中教授が意向
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20121009-OYT1T00716.htm

iPS細胞は万能細胞とも呼ばれています。
簡単に言えば、細胞を初期化することでどんな細胞にも作り変えることができる、というものです。

通常、細胞は卵細胞から減数分裂し、臓器や筋肉、皮膚といった特定の細胞に分化して行き、その逆はないとされてきました。
しかし、iPS細胞の技術はそれを可逆化することに成功しました。

図にまとめてみたのでご覧ください。

▼iPS細胞とは?(拡大図)

ただ問題はまだかなりの確率で癌化してしまうことです。
癌細胞はある意味、どんな細胞も癌細胞に置き換わるというものなので、iPS細胞に近いものです。
どのようにすれば癌化を抑え、狙った細胞に分化させられるか? というのが今後の課題のようです。

さて、ニュースでは明るい話題ばかりなのですが、実際iPS細胞が実用化されるとどうなるのでしょうか?
同時に見え隠れする「怪しい未来」も気になります。
これまでのライフスタイル、ビジネススタイルも大きく変わる可能性を秘めており、それはほぼ確定しています。

以下、図にまとめてみたので御覧ください。

▼iPS細胞の明るい未来と怪しい未来(拡大図)

画像が見辛いという人のためにテキストです。

■知能格差

健康で長生きが可能になると、長生きしている人間の方が知能が高くなる。
IQ200の人間も登場。

■身体格差

デザインボディの流行。心臓や腎臓を増やすなど身体拡張をした者とノーマルな者との間に身体格差発生。

■医療格差

健康で長生きが可能になると富を長く蓄える者が出現。
再生医療によって延命にかける予算に個人差が生まれる。

■若者不遇の時代

再生医療で若返りが可能になるとニューシニアの定年は消滅。
いつまでも椅子が空かないため競争参入が遅い若者は不利に。

■無性生殖の可能性

有性生殖による増殖から、複数人の遺伝子を掛けあわせたハイブリッド生殖が可能になる。 生まれながらにして多数のウイルス抗体、身体拡張能力を備えたデザインベビーの誕生。

■ホムンクルスの誕生

親を持たないホムンクルス(人造人間)の誕生は生物の三原則を根本から覆す。

■死者の復活

一度死亡宣告を受けた者でも蘇らすことができる。

■部分限定生物の誕生

脳だけ、筋肉だけ、腕だけ、足だけといった部分に限定した生物(キメラ)を創り出せる。経済動物への転用は殺さず肉を回収できる。

■有機サイボーグ問題

倫理的に難しかった機械と有機質(人の体)の融合化が進む。
超遠視能力をもった眼、犬並の超感覚を持った耳、車並に速く動ける義足など人体のデバイス化が進む。軍事利用。

■無脳問題

人が人らしくある根源が脳に強く求められる。
脳=感情があると倫理に反するため、ホムンクルスやキメラの無脳化が進む。
思考を人工的に奪われた生物の倫理問題が発生。

■ゴースト問題

唯一交換できない臓器=脳 に宿る意識=ゴースト がホムンクルスやキメラに発生した場合、その思考によって生まれた産物の所有権は誰のものか? 責任の所在はどこか?

■基本的人権のゆらぎ

5つの基本的人権にゆらぎが生じる。

・平等権=差別されない権利
・自由権=自由に生きる権利
・社会権=人間らしい最低限の生活を得る権利
・請求権=基本的人権を請求する権利
・参政権=政治に参加する権利

■人が人を所有できる可能性

人が作った人を所有し働かせることができる。
介護要員・労働者の解決。基本的人権の侵害は社会問題となる。

では、ライフスタイルはどう変わるでしょうか?

仮にiPS細胞によって人間の寿命が医療費の許す限り伸び続けると、

後生弱者と先生強者という格差が生まれます。

人が長く生き続けるということは、それだけ知識や知恵を貯め込めることを意味しています。学習を続けていくと知能指数が200を超すような超人が現れてもおかしくはありません。

すると、生殖によって遺伝子を組合せ、細胞をリフレッシュし続ける、という生物の基本戦略は根底から覆ります。老人優位社会の到来です。
生まれた子供が先生強者のスーパーシニア・ニューシニアが跋扈する社会に参入することは、非常に不利です。

今は若者が消費を支えていますが、今後はシニアが消費の中心となる逆転現象が起きると考えられます。

少子化で子供が少なくなっていますが、人間のサバイバル戦術が出産から延命へと変わると、子供を産む人はさらに少なくなり、子供に関連したビジネスも変化します。

ビジネススタイルはどう変わるでしょうか?

最も掛かる頭の痛い経費である人件費。
もしこれを低く抑えられ、重労働を課してもストライキを起こさなかったらどうなるでしょうか?

▼中国iPhone5製造工場でストライキ iPhone5製造停止で極度な品薄も

iPS細胞は人ならざる人を創り出せる可能性を持っています。
単に人間をクローニングしてしまうと、倫理問題、人権問題などが生じますが、ある特定の動作だけをさせることに特化した生体パーツとしての無脳な部分限定生物(キメラ)を創ることができれば、ライン製造も変わるはずです。

単純労働はキメラにやらせれば人件費の削減、効率化に繋がります。
中国や東南アジアのような人件費の安い国で生産する必要もなくなります。
同時にこれまでの単純作業をしていた労働者は職を失う可能性が高くなります。

介護や肉体労働など人が嫌がる仕事はコントロールされたキメラ生物に置き換わる可能性があります。
ロボットと組み合わせたサイボーグも出てくると思います。

既にメデューソイドというシリコンとネズミの心臓組織で作った人工クラゲが出来ています。

▼シリコンとネズミの心臓組織で作った人工クラゲ

【7月23日 AFP】(一部更新)シリコンポリマーとネズミの心臓の細胞で作られたクラゲのレプリカが、海洋の塩水に似た水の中を「泳ぐ」様子が22日、公開された。

▼メデューソイドの動画

▼3Dプリンティング、驚きの活用例7選

着脱可能で透明な歯列矯正、印刷すると鼓動を始める心臓細胞。さまざまな分野で使われ始めている3Dプリンティングの活用例を紹介する。

今、世界の富は一部の人間によって独占されているといわれていますが、人間自体も一部の人間によって人権を独占されようとしています。

10年、20年後は我々の想像を超すようなびっくりする世界がくるはずです。
ビジネススタイルもライフスタイルもいつまでも変わらないと思っていると、足下をすくわれるかもしれませんよ、という話でした。

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