新富裕層の野望 スカイピーポー化する人々

NHKで2013年8月18日(日)に放送された「NHKスペシャル “” vs. ~富をめぐる攻防~」を見ましたか?
今、新富裕層と国家との間で全面戦争が起きようとしています。
いつ消えるか分かりませんが、動画がアップロードされていたので紹介します。

新富裕層VS国家_富をめぐる攻防
内容をかいつまんで説明すると、アメリカは国の財政難、財政赤字を解消するために富裕層への課税を緩和し投資を促しました。結果、富裕層は拡大したのですが、富が国内で循環し失業者問題などが解決することはなく、富裕層は国外に富を持ち出そうと活発化しています。その理由として、高い累進課税があります。

累進課税方式というのは、儲かっている人ほど税金が高いという仕組みで、富裕層には頭の痛い問題です。
一方で経済発展を狙っている新興国では、税金を安くして富裕層の移住を促しています。富裕層が移住してくれば、彼らが投資で儲けたお金が税金として期待できるからです。
先進国と新興国では通貨価値が異なるため、税金を安くしても十分過ぎるほど財政は潤うというわけです。

例えば、1億円を儲けたとします。日本では4割の約4千万円が税金で取られますが、シンガポールでは約1800万円で済みます。

日本とシンガポールの税金の違い
日本とシンガポールの税金の違い

これはある意味、彼らにとってみれば何もしなくても約4千万円を盗まれるか、損失を出すようなもので、リスク以外の何者でもありません。これだけの違いがあるのなら、当然富裕層は本国に税金をバカらしくて収めたくないはずです。
なぜなら、節約した多額の税金で、さらに投資とリターンで複利が期待できるからです。

富裕層の言い分
富裕層の言い分
富裕層の言い分
富裕層の言い分

このような富裕層の租税回避が活発化すると、彼らはどの国にいてもネットを使いビジネスができるわけですから脱税し放題ということになります。
たくさん儲けている人達が脱税をするということは、それだけその国には富が循環せず、経済が立ち行かなくなるということを意味します。

天気で言えば、雨が降らず人々が泣け無しのペットボトルから水を提出するようなものです。
貯水池やダムの底が抜けているわけですから、どうやっても水は巡ることはないわけです。流しそうめんの下にいる人達はどんどん飢えていくことになります。
富裕層達を引き止めておくことは難しく、増税をすればするほど海外へと富裕層は逃げて行きます。
富裕層が脱税をすれば、足りない分を他の人が肩代わりしなければならず、貧困の格差は加速度的に広がっています。消費税増税や年金支給額の減額や先送りといった現実問題として現れてきます。
これが大体の内容です。

では、一体どうしてこのような事態になったのでしょうか?
富裕層というモンスターを生み出したのは、国家自身だと述べられています。発端は1980年代のアメリカの政策だったと言われています。

国家がモンスターを作り出した
国家がモンスターを作り出した

当時、アメリカの主力産業であった自動車などの製造が日本に追い上げられ、アメリカ経済は深刻な不況に陥っていました。
そこで、経済の再生を掲げたロナルド・レーガン大統領は金融の規制緩和に加え、大型の減税を実施し、投資を促しました。金融ビジネスで成功を収める人は増えて行きました。
2001年に就任したジョージ・ブッシュ大統領はさらに減税を推し進めます。
最高税率はレーガン政権以降、ブッシュ大統領の頃には70%から30%にまで下がりました。
その結果、逆に富裕層の数は240万人から720万人へと3倍に増えたのです。

富裕層の拡大に火を点けたのがレーガン大統領で、その火にガソリンを注いだのがブッシュ大統領でした。
背景にあったのはでした。富裕層がより豊かになれば、その富が国民にも滴り落ちるというものです。しかし、実際にはそうはならなかったのです。

ジョージ・ブッシュ大統領は富裕層への減税政策を推進した
ジョージ・ブッシュ大統領は富裕層への減税政策を推進した

富裕層を優遇することによって国全体を潤そうとしたトリクルダウン政策でしたが、この間に成長したITや金融ビジネスはかつての製造業のように雇用の拡大や幅広い層の賃金の上昇をもたらしませんでした。
むしろ、ビジネスに有利な場所を求めて国を離れていく新しい富裕層の誕生に繋がったのです。

国家を離れる新富裕層
国家を離れる新富裕層(クリックでGIFアニメが動きます)

どういうことかというと、昔はネットが発達していなかったので、場所とビジネスは一致していたのです。
その場所でビジネスをするということは、その場所に自分がいる、ということと同義だったのですが、グローバル化した現代では、どこにいてもビジネスができるのです。

例えば、製造業が主流だった時代は、ものづくりのためのヒトとバショが重要でしたが、ITや金融関係で簡単に儲けられるようになると、端末とネットさえあればなんとかなってしまうのです。
あとは、自分がいかに税金の安い国に帰属するかなのです。

レーガン大統領の時代に、まさかこんな社会がやって来るとは思わなかったのでしょう。アメリカの製造業に大打撃を与え、アメリカを金融とITへと目覚めさせたのが日本というのも皮肉なものですね。
さて、そんな国家という呪縛から逃れた新富裕層達はどこへ向かっているのでしょうか?

新富裕層達は自分の国を離れて、シンガポールやプエルトリコといったタックス・ヘイブンへと集まりつつあります。しかし、富裕層が集まったことでその国では投資熱が高まり、住宅などの不動産価格が高騰し、彼らよりもずっと賃金の低い一般人達が苦しめられています。
豊かになろうとするタックス・ヘイブンに確かにお金は集まりますが、一般の人々の暮らしは必ずしも豊かになるとは限らないのです。それどころか、彼らのせいで貧困格差が広がる一方なのです。
なぜかというと急速な経済の膨張はインフレを生むからです。

インフレは持っているお金の価値がどんどん目減りしていくわけですから、貯めこむよりは価格が上昇するものをどんどん買って、交換していかなければならなくなります。昔の高額紙幣が現代では破格の安さであるのと同じです。貯めて使わないと価値が下がるのです。そのため、人々は投資をするようになり、投資リテラシーのない人達は、どんどん資産を買えなくなってしまうというわけです。

当然、彼らに対する不満は高まる一方です。実際にデモも起きています。
新富裕層にとって、国家というのは出自でもプライドでもなく、お金儲けのための道具でしかないのです。
なのでよりメリットのあるタックス・ヘイブンへと集まっていきます。
彼らの集まるタックス・ヘイブンは必ずインフレをもたらし、貧富の格差を生み出します。
民衆の方が圧倒的に多いわけですから、暴動に巻き込まれたら堪ったものではありません。
究極的には彼らはスカイピーポーを目指すはずです。

スカイピーポーというのは、国を持たず空中に住まう人達のことです。まるでジブリ映画『ラピュタ』のラピュタ人のようですが、半永久的に静止軌道を航行するコロニーがあれば、国籍を捨て完全非課税の新しい「国」を持つことができます。
国と言えるかどうかは疑問ですが、国籍を捨てて国ではない場所でビジネスができれば、合法的に脱税ができるわけです。

最近進歩が著しい宇宙技術開発ですが、月や火星に行くのは大変な労力と技術が必要でも、静止軌道上にまで民間ロケットが行くことは可能になっています。要は特定の国の領空権のない場所にまで移動して、そこに住み、ビジネスができて、いつでも自分の意志で地上に降りることができればいいわけです。

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それはまるで、神話の世界。天空の神と同じです。新富裕層の野望、それは地球人でも宇宙人でもないスカイピーポー化なのです。近々、現実のものになろうとしています。

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