日本はTPPに参加すべきか? 資本主義の亡霊再び 後編

現在、TPPには

・アメリカ合衆国
・オーストラリア
・ブルネイ
・マレーシア
・ニュージーランド
・チリ
・シンガポール
・ベトナム
・ペルー

の9カ国が参加を表明しています。今後、増減があるかもしれません。

ここで日本特有の問題があります。
実はTPPは日本を加えた10カ国のGDP(国内総生産)で比較すると、アメリカと日本の2カ国で、その9割以上を占めてしまうのです。

つまり、10カ国間とは言いつつも、9割は日本とアメリカ間で行われる日米FTA(自由貿易協定)であるとされています。
TPPというのは、アメリカ対日本のガチンコの貿易競争をする、ということです。競争においてもっとも懸念されているのが農業です。

日本の食料は輸入にかなりの部分を頼っていますが、輸出をほとんどしていません。

品質に差はありますが、アメリカの安い農作物や肉類が日本に今よりもっと安い価格で大量に溢れるとどうなるか? 不景気なので消費者は喜ぶかもしれませんが、日本の農家は著しく弱体化することになります。

ただでさえ高齢化が進み、後継者問題が起きているところへ食の自由化の波が押し寄せれば廃業を余儀なくされる農家が続出するでしょう。

アメリカの農作物の主流は、今後はコストが安く災害に強く、大きな収穫が期待できる遺伝子組換え系作物です。カロリーゼロのお米やパンがもし実現でもしたら、そっちに流れて行くでしょう。
日本の食卓が汚染されていく可能性もあります。

なにより食料自給率の低下が進むと、さらに外国からの食料輸入依存度が上がるため、なにかあったときに日本は兵糧攻めに合うことになります。
TPPは農業だけには留まりません。

医療や医薬品の分野も含まれます。アメリカでは新薬の実用化が非常に速いことで有名です。その一方で、高額な医療費が大問題にもなっています。

日本の医療が崩壊する可能性も示唆されています。
患者にとっては安くて高い医療を受けられるかもしれませんが、日本の医療が外国資本に負けた後は、患者を治して壊す医療競争が激化します。

高い医療技術は確かに延命を可能にしますが、同時に治療費の負担額は増大します。終末医療で個人が破綻する可能性もあります。
TPPは医師免許の他に、弁護士免許、税理士免許の自由化、金融サービス、電子商取引、投資、労働、発電、そして武器開発など様々な分野の自由化が予定されています。

この分野はヤバイから除外してくれ、という例外は認められていないのが辛いところです。特に既得権益で守られている国家資格系は、軒並み自由化によって外国化が進んでいきます。

労働者も外国人が増えていくことになります。

単純労働しかできない労働者は職を失っていきます。
外国資本が増えていくと参政権にも影響を与えるようになり、政治の行く末も強い外国資本に有利なように進んでいきます。

もちろん、日本人も海外に進出するチャンスとなっています。

とはいえ一番の問題は日本人の語学力と開拓意欲でしょう。
英語がほとんど話せず、コミュニケーション能力の低い日本人は、海外展開にあまり興味を示せないと思われます。

海外進出と言えば70年以上前に、日本は大東亜共栄圏を掲げました。
いわゆる太平洋戦争であり、第二次世界大戦です。
日本人が開国後もっとも海外に進出した時代でした。
大東亜共栄圏というのは、鬼畜米英の植民地化に対抗して、日本がアジアの中心となり東アジア・東南アジアに共栄圏を創ろう、というものでした。
これが今となっては評価されつつあります。

太平洋戦争と言うのは産業革命以降、経済効率化によって増え続ける人口を維持するための資源確保と市場開拓の末に起きた戦争です。
日本がアメリカに戦争を売ったのは、資源と市場の利権から締め出されたからです。資源の乏しい日本が石油と鉱物を求めて太平洋に戦線を拡大した理由は、ジリ貧になるのは嫌だったからです。

ところが、70年以上前にアジア諸国が発展途上でジリ貧だった頃より、戦後の経済状況は悪くなっているのです。

今では世界総ジリ貧となりつつあります。ここで何が言いたいかというと、未だかつて人類は納得の行く主義を構築できていないということです。

つまり、世界が今経済成長で行き詰まっているということは、そのやり方が間違っていたということです。増え続ける世界人口を支えるには、資本主義もダメ、共産主義もダメだったということです。ニューヨークの99%デモもダメです。

仮に1%の富裕層が99%の非富裕層を支配したとしても、そもそもそのような構造を作ったのは、市民だからです。
資本主義と民主主義と基本的人権は公正のように思われていますが、投票をしたのは市民なのです。オバマ大統領が当選したのも市民が投票したからです。

つまり、1%の富裕層が99%の非富裕層を支配していると反発することや、このような世の中になったのはオバマ大統領のせいだと考えることは、その成り立ちである民主主義のやり方を否定することになります。
民主主義というのは多数決原理です。
多くのみんなが選んだことは正しいか否か? と問うことになります。

結果として反発が起きているのならば、多くのみんなが選んだことは正しくは無かった、ということです。
多数決原理は公正で正しいけれど、弱点があったということです。
49:51のような僅差の票では、たったの一票というゆらぎが大きな格差を生み出すということです。

51の賛成票に対して、49の反対票。
10:90の票決とは中身が明らかに異なります。

ウォール街のデモがいまいち的を得ないのは、元を正せば自己責任を問われるからです。単に富裕層からお金を取り上げても、正しい主義が構築されない限り、また新たな格差を生み出すことになります。

しかし残念なことに未だもって、多数決原理から派生した民主主義に替わる公正な意思決定は存在しないのです。
資本主義と民主主義と基本的人権という3つの黄金柱を使い巨大な箱舟を建造したアメリカがそのやり方に行き詰まっているということは、そのコピーをした国も行き詰まるということです。

資本主義と民主主義と基本的人権というのは厄介です。

・富の再分配
・多数決原理
・人は最低限人間らしい生活を保証されている

という原則のはずが、まるっきり逆方向へ働くということがアメリカで実証されたのですから。真逆の共産主義を掲げたソ連が崩壊した理由は資本主義への敗北です。
共産主義は私のものはみんなものです。
資本主義はオレのものはオレのものです。

共産主義では産まれたものは全てみんなで共有するので、競争する必要がないのです。一方資本主義では、産まれたものは原則として産み出した者が所有できるので、労働意欲が高まり競争が発生します。
共産主義の大国ソ連が崩壊したのは、経済は競争しなければ活発化しなかったためです。

辛うじて仮想的にアメリカを持ってくることで冷戦という状態を作り出し、共産の必要性を訴えていたのですが、冷戦が終わってみれば、みんな自由を謳歌するアメリカハリウッドの世界に憧れて家を飛び出してしまったというわけです。

しかし、競争に勝ち抜いた挙句、みんなが豊かになり売り手に回ってしまった世界では、買い手が存在しなくなります。
資本主義では必ずどこかに買い手となる貧困弱者がいなければ成立しないのです。
結果的に一社一強に近付ければ近づくほど、(リレー)が無くなってしまい、富は内部留保し出すわけです。
焼畑を続けていくと、やがては土地がなくなってしまうことに似ています。

TPPはうまく行かなかったアメリカ流を世界に広げようとしています。
アメリカが抱える問題が世界に飛び火する可能性が高いのです。
TPPによってしばらくは経済成長の伸びシロが広がり、景気がよくなるかもしれませんが、最終的には問題が煮詰まって元通りです。

ではTPPに参加する意味はないのか? というと2つ意味があります。
ひとつは、これからアメリカに次いで台頭するだろう最大の事実上の共産主義国である中国に対する牽制です。

TPPに中国とロシアは参加していません。アメリカが弱体化すると、これから成長が著しい中国がアジア圏を席巻して行くことが予想されます。

昨今の尖閣諸島沖の紛争や、ロシアの北方領土問題を見ても、日本は隣国に狙われています。

アメリカ軍が日本から撤退すると示威行動はますます高まることが予想されます。
TPPは再燃する資本主義vs共産主義の代理戦争でもあるのです。

とはいえ、どちらの主義も間違いだった、ということは既に歴史が証明しているので、どちらが勝っても世界平和は訪れないでしょう。

もうひとつは非常に重要でクリティカルな理由です。
それは気象災害の激化です。
アメリカが毎年のようにハリケーンに襲われていることはご存知だと思います。日本でも今年台風によって大きな被害が出ました。
北朝鮮やソマリアでも気象災害が発生し飢餓が起きています。
ヨーロッパでは記録的な熱波が発生しています。
今はタイが水害によって大きな被害が出ています。

このような世界規模の気象災害が今後激化することが予想されています。
理由は地球の温暖化といわれており、このまま二酸化炭素を排出し続けると地球の気温が上昇し続け、海上で大きなハリケーンが発生しやすくなると言われています。

気温は海流にも影響し、海流の方向を変え、海洋資源も変動させます。
海流から発生する気流は大陸の気候にも影響を与えていきます。
日本では亜熱帯化(気温が高く雨が大量に降る)が指摘され、作物の北限、南限が北上しています。

今年は日本に様々な自然災害が襲いましたが、こういった災害が同じ場所で同じ時期に繰り返し起きるようになることが予測されています。
スーパーコンピュータの地球シミュレーターを使った予測では、正に今年が異常気象元年なのです。

地球シミュレーターでの予測は非常に楽観的です。
前提条件をCO2の排出枠が決められた京都議定書の通りに、各国が努力をした結果を元に算出してあるからです。

京都議定書でのCO2削減枠はアメリカが真っ先に「できるかよ!」で離脱しています。
地球シミュレーターの予測では京都議定書の通りに見積もっても、異常気象を食い止めることはできないことが分かっています。

シミュレーター結果として、地球規模で異常気象が発生し、まだら状に人が住めない土地が発生することが示唆されています。

その結果、各国で気象災害難民が発生し、居住可能な人間圏が縮小することが考えられています。
今現在は経済規模でTPPが語られているのですが、そう遠くない将来では、気象災害規模で経済連携が語られるようになるはずです。
国土が広いとか、人口が多いということではなく、その場所がどのくらい安全かが重要になってくるというわけです。

日本では首都直下型地震、東海・南海・東南海地震の発生確率が90%を超えています。富士山の噴火や、爆発が懸念されている北朝鮮の白頭山など、災害のオンパレードです。

TPPの話し合いでは、予測できる経済面ばかりが目立っていますが、災害面でも日本を俯瞰しないとまずかったりします。
異常気象が激化した後、TPPはある意味難民救済に不可欠になるかもしれませんね。

▼異常気象 地球シミュレーターの警告



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