北朝鮮の金正日死去後の国家情勢は危うい 後編

話は戻って、北朝鮮の金正日死後、息子の金正恩へと権力が継承されると、金正恩がどのような政策をとるかが分からない怖さがあるわけです。
これまで金正日は様々な状況をうまくみてギリギリの瀬戸際戦略でしのいできましたが、これは非常に高等な交渉技術です。

言ってみれば、今の東アジアのパワーバランスを作ったのは、北朝鮮の瀬戸際戦略でもあるのです。この戦略を金正恩が使いこなせなければ、パワーバランスが崩れてしまうのです。
飢餓にあえぐ軍部のクーデターの押さえ込みもしなければなりません。
若干28歳の若者にできるか未知数です。

北朝鮮が今後どのような政策をとるかでパワーバランスが大きく変わってくるので、世界が注目しています。
アメリカが考えるシナリオは、北朝鮮が中国の支援を受けて韓国と戦争。
韓国はアメリカが支援し、軍事力の差で韓国が北朝鮮を併合。
韓国にアメリカ軍基地を設置。中国の軍事力を押さえ込み、中国の弱体化を狙う、といったところでしょう。

しかし、問題があります。
市民個人の力が強くなっていることです。アラブの春でも見られるように市民運動やデモは国が抑えきれないほど強大になっています。
国の政策には本音と建前があります。
国民には言えない秘密裏の軍事行動もあります。

特に外交については駆け引きなので本音と建前が色濃くでる場面です。
今各国で諜報活動が盛んに行われています。日本の三菱重工や政府のサーバーへのサイバーテロは中国経由だと分かっています。
金正日の行動はスパイ衛星で追跡され、中国は金正日死亡を当日に把握していた、という報道も出てきています。

米ソ冷戦時代では本音と建前が露見しにくかったものが、ネットの登場でいとも簡単に国の本音と建前が露見し、専門家だけではなく個人にも伝わり、気軽に意見が言えるようになりました。今はママが世界を語られる時代なのです。

その結果、国策が民意によって覆されるということが起きています。
例えば、日本であれば積極的に中立の立場に立ち介入しない、という風見鶏戦略をとっていますが、国民にとっては随分と頼りなく映ります。

当然、どうして反撃しないのか? どうして言いなりなのか? どうしてお金を出すのか? という反感が生まれることになります。
そして、当然のことながらその理由は政治的問題で国民に真意が語られることはありません。ますます誤解を生むことになり、現政権の短命化へと繋がります。

日本が風見鶏戦略をとられる大きな理由は、日米安保条約があるからです。
非核三原則と専守防衛の自衛隊というノーガード戦略と、軍事力世界一の同盟国アメリカの脅威があってこそなのです(その見返りとして様々な不利な条件をのまされ続けていますが)。

アメリカは経済も軍事力もナンバー1戦略をとっています。
1こそ正義というものです。
強いアメリカが率先して世界を導いていく、というのがアメリカの目指すところです。

ところが、ナンバー1戦略に翳りが生じてきたのです。
無限に市場を拡大していかなければならない、という資本主義に限界が生じたのです。先進国の人口減少やナンバー2、ナンバー3の強大化など地球環境を破壊しながらの経済成長に限界が生じてきたのです。
焼き畑農業では、全てを焼き尽くしてしまったら終わりなのです。
2011年は世界がアメリカ型を目指しても未来はないと確信した年なのです。

経済だけでなく軍事力の面でも限界が生じています。
先進国は核抑止力によって三すくみ状態を作り出しましたが、アメリカがならず者国家と認定した北朝鮮やイランでも核開発が進み、核抑止力の意味が成さなくなってきたのです。

アメリカは核抑止力の代わりとしてステルス戦闘機の開発を行っています。
これはレーダーに感知されず、敵国が核ミサイルを発射する前に発射施設を破壊するものです。小型無人化が進み、さらに施設上空に待機させることができると、もぐら叩きが可能となり、核抑止力抑止力となります。

しかし、その最新鋭の無人ステルス偵察機が先日イランで落とされ、無傷のまま鹵獲されています。
このようにアメリカの目指すナンバー1戦略に翳りが見え始めているのです。

アメリカの影響力が小さくなると、それまで押さえられてきた国々が自国の支配権拡大のため動き出します。なぜかというと、経済成長のためには資源が必要で、その資源は限られているからです。

東アジアはアメリカの影響力が低下すると、代理戦争国である北朝鮮と日本の出方が今後の情勢を左右することになります。
日本は風見鶏戦略をとっていますが、北朝鮮の新指導者である金正恩はまだなんの動きもありません。

世界はある意味たった一人の男の気まぐれで決まりかねないのです。
世界が注目する理由はここにあります。
北朝鮮の金正日死去後の世界情勢は危ういのです。

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