カジノ資本主義の終焉 迫る第三次世界大戦 中編 その1

前回は、イランが核開発をしたい理由にも、アメリカがイランに制裁を加えたい理由にも、必ず本音が隠れている、という話をしました。

お互いの本音はなにかというと、とどのつまりは成長のためのエネルギーの確保をどうするか? ということです。

有史以前から人類が取り組んでいるテーマのひとつに「エネルギー問題」があります。エネルギー問題というと最近の話のような気がしますが、エネルギーの形は変われどずっと人類はエネルギー問題に直面してきたのです。

例えば、世界で最初に生まれた文明とされるメソポタミア文明はエネルギー問題(環境問題)で滅んでいます。

約紀元前3500年前に栄えたメソポタミア文明はチグリスとユーフラテスの二つの川にはさまれた地方にあったとされています。

かつてメソポタミア地方と呼ばれた場所は、現在イラクとして知られています。

メソポタミア地方に住む人々はシュメール人と呼ばれていました。

メソポタミア文明は農耕が中心で、既に都市国家が成立しており天体観測技術や暦術、くさび形文字など高度な文明を誇っていたといいます。栄華を誇った都市が何故滅びてしまったのでしょうか?

文明の成熟度は、人々の生活水準に比例します。

生きることに一生懸命で、今日の糧を明日に回す(投資)ことができない生活では、高い文明は生まれません。

メソポタミア地方に都市国家が成立した背景には、農業生産性の高さがあります。

チグリスとユーフラテス川は「肥沃な三日月地帯」を形成しました。

麦と羊の原産地だったこともあり、農業をするには最適でした。

豊富な日光、肥沃な土地、豊富な水という農業には欠かせない要素が揃っていたのです。

どれだけ農業生産性が高いかというと、一説には1粒の麦を播いて、20倍から80倍の収穫があったといわれています。19世紀のヨーロッパで麦の収穫は播種量の5~6倍程度と言われていたので脅威の収穫量です。

どんなに才能がなくても種さえ蒔けばなんとか食べていけるわけです。

現代でもヨーロッパでは15倍から16倍、アメリカで23倍程度ということなので、メソポタミアの農業生産性は後世の産業革命後より高かったのです。

農業生産性が高いと人々は食うに困ることが少なくなります。

職は農業をしていればいいし、人が増えれば労働力となります。

人口が増えていくと街が形成されます。街同士がくっつきあい都市が生まれます。

都市には法律が生まれ、市場、学校、水路といったインフラが揃い、地方からさらに人々を惹きつけ巨大化していきます。

増え続けたシュメール人はメソポタミア地方にたくさんの都市国家を築きました。

ウル、、ラガシュなどとが有名です。

都市国家が増えると土地や水源などを巡り争いがおきます。

都市国家同士の抗争は激しく、統一国家ができることはありませんでした。

メソポタミア文明と言えば、ギルガメッシュ叙事詩が有名です。

ギルガメッシュ叙事詩は、ウルクの都市に実在したとされるギルガメッシュ王を主人公とした伝記です。

このギルガメッシュ叙事詩にメソポタミア滅亡に関連することが書かれています。

どういう話かというと、「もののけ姫」に似ています。宮崎駿監督が影響を受けたともいっています。主人公であるウルクの王ギルガメッシュは、3分の2が神で残りが人間という異形の混血です。

傍若無人で暴君であったギルガメッシュに、神は彼と互角の力を持つエンキドゥを造ります。エンキドゥは野生児でした。そこでギルガメッシュはエンキドゥにシャマトという娼婦(女神官兼神聖娼婦)を与えました。

エンキドゥはシャマトと6夜7日を一緒に過ごします。エンキドゥは力が弱くなったかわりに思慮と人間性を身につけます。

その後、二人は対決し壮絶な戦いの末お互いを認め合い、無二の親友となります。

良き友を得て幸せな生活を送っていた二人。

ある日のことウルクに災害が起きるようになります。

この災害は森に住む番人「フンババ」という怪物のせいだと考え、二人で退治に出る決意をします。

周囲の人々はフンババの祟りがあるから止めておけと制止します。

しかし、ギルガメッシュ達は冒険へと旅立つことになります。

ギルガメッシュとエンキドゥは杉の森にやってきて、その美しさに感動するのですが、この豊かな杉の木を伐採しようとします。ウルクは森林資源に乏しかったためです。

ところが、森には番人のフンババという怪物がいます。

怪物を倒さなければ豊かな杉の木を持ち帰ることはできません。

フンババとの死闘の末、エンキドゥがフンババの頭を切り落とし殺してしまいます。

エンキドゥはフンババの頭を金桶に入れて持ち帰り、二人は英雄となります。

英雄となったことで、ギルガメッシュは愛の女神イシュタルに誘惑されるのですが、ギルガメッシュは彼女と付き合った者たちが悲惨な運命を辿ったことを知っていたので、そのプロポーズを断ります。

怒ったイシュタルは、巨大な天の牛を差し向けるのですが、二人は力を合わせてこれを退治します。

しかし、その祟りのせいでエンキドゥが病に倒れ、衰弱して死んでしまいます。

ギルガメッシュは悲しみ、死の存在にショックを受けます。

人はなぜ死んでしまうのかと悩むようになります。

そして、不死を求めて旅に出る決意をします。

ギルガメッシュは荒野を進み、途中で出会ったサソリ人間や神々の制止の忠告も聞かず、かつて永遠の命を得たという老人ウトナピシュティムに会います。

老人は、かつて人間を滅ぼすために神が大洪水を起こし、自分の家族だけが箱舟を造って助かった、という昔話を聞かせます。

大洪水に関する長い説話の後に、ウトナピシュティムから不死の薬草のありかを聞きだし、手に入れるのですが、蛇に食べられてしまいます。

ギルガメシュは失意のままウルクに戻ります。

こんな感じの内容です。

ギルガメッシュ叙事詩から分かることは、人口増加によるエネルギー問題を環境破壊で解決してしまったことです。

現代ではエネルギーというと電気や石油なのですが、昔は木材や石材なのです。

農業生産効率の良い土地で増え過ぎたシュメール人達は、地中海東岸のレバノン山脈から小アジアにかけて広く分布していたレバノン杉を根こそぎ伐採してしまいました。

森林を伐採すると何が起きるかというと、木々が地中に水を蓄えられなくなり土壌の侵食が進みます。河川に流入した土が下流に堆積したり灌漑用水路を塞ぐと、行き場を失った水が大洪水を引き起こします。

洪水には塩類が含まれており塩害を加速しました。

その結果、紀元前2100年前後には、大麦の収穫量は最盛時の40パーセント程度まで落ち、紀元前2000年頃には、シュメール帝国は崩壊しています。

主食の大麦を育てるのに適さない土地になったためです。

丸裸になって荒廃した土地は現在も荒廃したままです。

以後、中東は森林を伐採したため荒廃した土地が多くなり、生き残りをかけて豊かな土地を求め民族対立が激化します。

環境破壊が進むと生存に適した土地とそうではない土地が出てきます。

肥沃な土地には都市が形成され栄華を極めますが、痩せた土地では農業ができないのです。

痩せた土地では移動を続けながら遊牧をするか、肥沃な土地を奪い取るか、奴隷になるかです。成長のためのエネルギー争奪戦です。

中編その2に続く

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