クライムマーケティング その2 売り手の利益を最大化させる

前回は、売り手も買い手も最大利益を得るためにお互い先読みをしあっている、という話をしました。
昔ながらの人情や付き合いといったほのぼのとした商売ではなくなりつつあります。
不景気で懐事情が寂しくなればなるほど、売り手と買い手の両者の関係は先鋭化します。

さて、ここでいう最大利益とはなんでしょうか?
売り手にとっての最大利益はタダで仕入れて、無限に高く売ることです。
買い手にとっての最大利益はタダで無制限に手に入れることです。
両者が最大利益を求めると対立することになります。

実際例を見てみましょう。
例えば、売り手の最大利益は情報を仕入れて、その情報をオークション形式で販売することです。
情報というのは、保険といったリスクや貸したお金の利子、著作物などがあります。
情報を作るまでは大変ですが、一度情報化してしまうと複製が容易になります。

例えば有名アーティストの楽曲の版権を持っていれば、著作権が有効なうちは著作権料が発生し続けます。
みんなが欲しいと言えば、利用はオークション形式で価格は上昇します。
例外はありますが銀行家、投資家、マスコミなどは手に入れた情報を担保にして情報をタダ同然で仕入れて、人気に応じていくらでも高く売ることができます。

次は買い手について見てみましょう。
買い手の最大利益は無料で市場価値のあるものを手に入れることです。
例えば、家庭菜園をしていて、スーパーで売っているような野菜がタダで手に入るなどです。

しかし、これだと問題があります。
確かに自分が家庭菜園をしていれば無料で野菜は手に入りますが、家庭菜園をするコストは掛かっているということです。
つまり、厳密には無料ではなく、家庭菜園のコストを割引しているに過ぎないのです。 無料にするには、他者が営む家庭菜園から野菜をもらうことです。

では、他人がせっかく作った家庭菜園の野菜をくれるかというと疑問です。
ひとつやふたつ分けてくれるかもしれませんが、無制限には分けてはくれません。

タダで無制限に手に入れるには、万引きや窃盗しかないのです。

ここが非常に重要な点なのですが、買い手が非生産者である場合、市場価値のあるものをタダで無制限に手に入れる手段というのは、盗むしかないのです。
なぜ盗むのかというと、例えば、生産したものをタダで分け与えるとどうなるかというと、それは市場価値が無くなる、ということだからです。

最初からタダで配られているものは、誰でもタダで手に入れられるので利益ではないのです。
あくまでも市場価値を維持したままタダで無制限に手に入れるには、盗むしかないわけです。
つまり、買い手が最大利益を追求するには、万引きや窃盗しかないということです。
クライムマーケティングで最も重要なことはここです。

話をまとめると、売り手と買い手が最大利益を求めるとこうなります。
売り手はタダ同然の情報をさももったいぶって高額でふっかけて、買い手は難癖をつけてあらゆる方法でそれをタダ同然で盗もうとします。

グローバル化が進むと複数の市場が接続され、競争は激化し利益は薄くなります。
そのため売り手は手間やお金が掛かる現物の製造よりも、よりコストの掛からない情報系を商品の主軸とするようになります。

例えば製造業に頼らない金融資本主義といわれる虚業がはびこるようになります。このビジネスがどれだけ儲かるかは語るまでもないでしょう。

話は戻って、売り手が利益を最大化する買い手に対抗するには、クライム(犯罪)ベースで考えることです。
従来のマーケティングが顧客(買い手)のニーズをリサーチして、顧客満足度を上げることを至上命題にしてきまたが、クライムマーケティングでは一歩引いて考えます。

売り手がマーケティングを仕掛けると買い手がそれを学習するウイルスとワクチンのような関係では、単に新しいマーケティング手法を発明しても短命に終わる可能性があります。
そこで、まず売り手の利益を最大化する方法から考えます。

単純な例から説明します。
例えばネットで商品を売るとします。買い手が商品を注文して入金を確認したとします。

ここで売り手が商品を買い手に発送しなかったらどうでしょうか?
お金はもらったのに商品を渡さないのですから、売り手の利益は大きくなります。

ただし当然のことながらこの方法ではクレームがくるのは火を見るより明らかです。
クレーム後も商品を渡さなければ犯罪ということになります。
でもいいのです。考え方はこれでいいのです。

犯罪に問われるか、あるいは買い手の心情は別として、売り手の利益を最大化することを考えます。思考のトレーニングです。
その上で現実に落としこみ、段階的に妥協していきます。

先ほどの例だとお金を受け取ったにも係わらず、商品を渡さないのは犯罪ですから、現実的に妥協する必要が出てきます。
この妥協の過程が儲かるビジネスモデルを見つけるヒントになります。

お金を受け取ったにも係わらず商品を渡さないと罪に問われて大きなペナルティとなる場合、クレームを最小限に抑える方向で考えます。

例えば、商品を確率的なクジのような形式にすれば、商品が発送されない=外れた ということになります。
クジですから買い手も納得する可能性は高くなります。

この場合、渡さないことが希少価値となり、万が一当選した場合には満足度に繋がります。
あるいは商品をおまけという位置付けにして、期間限定で次回購入時に手に入るというルールにします。

考え方は色々とあると思いますが、結果は無視して売り手の利益を最大化することを考えます。
その上で、現実的にトラブルにならない方法にまで妥協する、というのがポイントです。

サービス至上主義の世の中では、買い手の満足度(顧客満足度)を最大化することからスタートするよう教えられるのですが、
買い手は必ずクライミング(犯罪思考化)に走ります。
タダで盗もうとする傾向にあります。
そのため次から次へと新しいマーケティング手法が必要となり、リスクは高く舵取りが難しくなります。

お客様は神様、お客様の声に耳を傾けろと言われますが、勘違いをすると足元をすくわれます。
売り手が真っ先に買い手側の立場に立つということは、クライミングを助長することになります。

結果的に買い手側の立場に立つことはあっても、考え方のスタートラインは売り手の利益を最大化することからスタートしなければなりません。

続く。

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