美容クリニックの施術前後写真、ウェブサイト掲載禁止へ

1月16日のニュースで気になるものがあった。
「厚労省、美容クリニックの施術前後写真などのウェブサイト掲載を禁止へ」というものです。

施術前後写真というとビフォアーアフター写真といわれ、大抵はビフォアー写真よりアフター写真の方が見栄え良く写っています。
広告宣伝においてこの表現が消費者に誤解を生むとして問題になっていたようです。

今回問題になっていたのはウェブサイト上の表現です。
ウェブ上では紙のように紙面という制限が少ないので、いくらでも情報を盛り込むことが可能です。

例えばよくあるのは、患者の体験談とともにビフォアーアフター写真が使用され、さらにキャンペーンで今だけ安い、特典がある、という表現と併用されることです。

このことが消費者の射幸心を煽り誤解を招くトラブルを生んでいる、というのです。その背景はなにか?

美容整形というのはリスクがあります。施術しても期待通りの効果が出ない可能性があります。また、手術中、手術後に痛みを伴ったり、副作用が現れたりする可能性もあります。

リスクを覚悟して施術に臨むかどうかは消費者の自己判断であり、自己責任です。場合によってはお金を払ったのに、期待通りに仕上がらない可能性だってあります。そういったリスクを承知の上で、やるか、やらないか?という判断を下さなければなりません。

ところが、リスクについては消費者の自己判断と自己責任とは言いつつも、調べようとすると、うまく行かないのです。
それはなぜかというと、リスクについてはほとんど触れられず、良いことばかりが書いてあるからです。

特にネットの場合、高い施術料に対して強力なバックマージンが発生するので、広告や紹介で埋め尽くされてしまっています。
施術医院が自分のウェブサイトで広告するならまだしも、まったく関係のない人間が美容系コンテンツを作成し、そこに広告を載せていることもあります。

彼らが派手な広告宣伝をすることはあっても、リスクを前面に押し出すということは絶対にやりません。
リスクを表示する時は、結局のところだから○○の方が安全! というレトリックとなります。

これでは、嘘つきに対して「あなたは嘘つきですか?」と尋ねるようなもので、正しい情報は手に入りにくくなります。

例えば、知恵袋系のQ&Aサイトで、関係者が質問者を装い○○クリニックの美容施術は安全か? という質問をし、それに関係者が専門用語を網羅し安全と答える自作自演もあります。第三者からしてみれば客観的な役立つ情報として目に映り、信頼度を演出できます。

一方でアングラなサイトでは、○○クリニックは失敗が多い、嘘ばかり、というネガティブキャンペーンが行われ、関係者とも部外者ともつかない書き込みで溢れています。 今や、口コミも体験談も、専門家からのアドバイスでさえ、利権なくして語れないのです。

本当のことが知りたいのに、ネットでは広告だらけ、良いことしか書いてないとすれば、消費者の自己判断と自己責任とは言え、正しい判断がしにくいというわけです。

また仮に良いことばかりではなく、リスクが前面に押し出された「成功するかどうかはあなたの運次第!」という馬鹿正直なサイトがあったとしたら、怖くて誰も申し込まないでしょう。100枚の成功写真があったとしても、1枚の失敗写真があれば見込み客は躊躇します。

心理的に成功の体験談が豊富に掲載されていて、院長がどや顔で写っている安心できる情報が満載のウェブサイトを信じたくなるものです。
そのサイトに「今ならキャンペーン中で50%OFF」と書かれていれば正常な判断などできるはずがありません。

結局、自己判断と自己責任のつもりで申し込みをしても、情報の質量としては圧倒的にメリットばかりなので、実際のところ情報が偏っているのです。
そこで、施術にあたり、実はキャンペーンは終わっている、実はこの施術もあとでしなければならない、副作用がある、失敗した、ということになれば消費者とトラブルになるのは当たり前です。

話は戻って、厚労省が何を求めているかというと、消費者の射幸心を煽るな、リスクについてをきちんと説明しなさい、ということです。しかし、この問題は意外と大きいのです。

美容クリニックだけの問題か? という疑問です。

ネットのコンテンツ、ウェブサービスのほとんどが無料です。
無料を支えているのは多くは広告収入です。普通、広告は関連するコンテンツに付随します。
ダイエットブログにはダイエット関連商品があり、ゲーム攻略サイトにはゲームソフトの広告があったりします。

コンテンツオーナーは広告収入が欲しいので、広告商品に関連したコンテンツを作ることがあります。その広告商品をけなすコンテンツを作るくらいなら広告を載せないほうがマシですよね。

ではここで、ユーザーがあるコンテンツを見て、そのサイトに掲載されている広告商品を購入したとします。サイトオーナー(コンテンツオーナー)には広告経由での収入が発生します。

ユーザーが広告商品の購入を決定したのは、そのサイトのコンテンツにその広告商品のことが好意的に書かれていたからだとしましょう。
しかし、ユーザーは商品が届いてからガッカリしたとします。
思っていたものとまったく違う、と落胆したとします。

例えば、ゲームソフトを購入したとします。
みんなが面白いと言っているが、自分には難易度が高すぎて楽しめなかったということがあると思います。

この時、ユーザーが購入のキッカケとなった広告やその広告を載せたサイトに苦情を言うのは正しいかどうか?
そのサイトオーナーは広告収入を受け取っているので、まったく無関係というわけではありません。

当然、購入は「自己判断」と「自己責任」ということになるのでしょうけれど、購入したユーザーに100%責任がある、というのも変です。

買った人が悪いとしてしまうと、売る方がインチキをしても許されることになってしまうからです。

こんな笑い話があります。ネットオークションで「私の恥ずかしい写真あげます」という怪しい出品があって、それを落札した男性の元に届いたのは「0点のテスト写真」だった、というオチです。

極端な話ですが、こういうのもアリかどうか? という話です。
また、逆にユーザーが悪意を持って「イメージと違った、思っていたものと違う」と苦情を出したらどうでしょうか?

この境界は人の感覚に頼る所にあるし、真偽の程はエスパーでもなければ分からないので、グレーゾーンの問題です。
しかし、近年では「自己判断」と「自己責任」と片付けてしまえないことが起きているのです。

つまり、美容クリニックの施術前後写真だけの問題ではなくなる可能性もあるのです。特に感覚に左右される飲食の分野では出てくるでしょう。
実際、食べログのレビューのやらせは問題になっています。

モノが売れなくなった時代、売上アップのために広告宣伝が激しさを増し、今後は様々な広告の規制が出てくると思われます。

広告を出したい人や、ブログである商品を紹介したいという人は、気を付けなければいけませんね。

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