あなたの仕事はなくなる? サイボーグ化とサイバネ・ディバイド問題

今年5月初めにこんなニュースが報じられました。
視力を失った盲目の男性が、マイクロチップを眼球に埋め込むことで10年ぶりに視力を取り戻した、というものです。

▼目のサイボーグ化による失明治療が世界で初めて成功 マイクロチップを眼球に埋め込む

このニュースの意味するところは非常に大きいと思います。
というのも、今まで義肢といった部分的なサイバネテクスの融合はあったものの、生体との接続は非連続だったからです。

どういうことかというと、「思ったように動かす」というシームレスな運動が難しかったからです。
義肢側にコンピュータ制御を任せたアシスト機能はあったものの、それだとやはり「思ったように動かす」こととは違います。コントローラーを握ってアバターを操作するようなワンクッションおいた運動でした。

連続したシームレスな動きを実現するためには、神経へ信号を送り、脳に直接働きかけなければなりません。
この時問題になるのは、生体部分と非生体部分を接続しなければならないことです。

人間の神経回路と神経線維は有機的であるし、その中を通る信号もビニルに巻かれた銅線とは違います。
この異なるデバイス同士の接続が難しかったのです。

人間には人間が理解できる信号があり、機械には機械ができる信号があります。
異なる信号の相互変換ができなければ、人間と機械との融合、つまりサイボーグ化は難しいのです。

今まで信号の相互変換がボトルネックになっていました。
それが最近になってブレークスルーしました。
これがニュースの意味するところです。

まだ技術的に解像度は低くモノクロのようですが、技術が進めば解像度はどんどん上がり健常者の視力と変わらない領域にまで達することになると思います。

サイボーグ化の分野は非常に研究が盛んになっていて、まだ部分に限定されますが、脳波を使って義手を操作する、家電を操作する、という試みがたくさん行われています。脳波トイと呼ばれるおもちゃも出てきています。

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では、このままサイボーグ化が進むとどうなるのかというと、格差(ディバイド)が生まれることになります。
今はまだ障害者支援に研究のウェイトがありますが、弱者にとってのバリアフリーは強者にとってもバリアフリーに成り得ます。

障害者支援のために開発された技術が健常者にも広く普及することは当然起きます。
特に少子高齢化で悩む先進国は、高齢者に医療費を投資するよりも、サイボーグ化を進め福祉に頼らない社会を実現するようになるでしょう。
税収を増やすために寝たきりから雇用へがスローガンになるはずです。
労働力の安い移民を受け入れるぐらいなら、自らが働いた方がマシです。

しかし、同時にサイボーグ化が進むということは、キケン・キタナイ・キツイといった3Kの仕事がなくなるということです。
また単純な軽作業もなくなります。

なぜかというと、サイボーグ化によって人間の潜在能力が増大し、誰でも簡単にできてしまうからです。

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その分野に就業する人が増え、なおかつ一人で数倍の仕事をこなすようになると3Kの仕事はなくなります。
レジ打ちや袋詰めといった単純作業もなくなります。
能力は育てるものから買うものへと考え方は変化し、格差が生じます。
これがサイバネ・ディバイドです。

サイボーグ化によって人間の潜在能力が増大する、ということは、つまり、サイボーグ化によって人件費は何倍にも圧縮できる、ということを意味しています。個人の能力の差も小さくなっていくと思われます。
履歴書にはサイボーグ化率や導入デバイスのスペックを書き入れる日も近いでしょう。このような時代が間もなく訪れようとしています。

ところで、サイボーグ化が進むとサイボーグ化しにくい脳についてが注目されます。
論理的に誰もが体をサイボーグ化して個性がなくなれば、サイボーグ化できない脳だけが残ります。
つまり、「人間らしさ」という要素が、人間の価値を決定付けることになります。

となると、仕事も単純軽作業、3Kはなくなり、人間らしさを活かした仕事だけが残り、知識のある人間力が高い人が有利になるような気がしますが、そうとも限りません。
前述したマイクロチップを眼球に埋め込み視力を回復した男性の話に戻りますが、成功の秘訣は信号の相互変換です。

信号が相互変換できるということは何を意味するかというと、距離を問わなくなる、ということです。
例えば人間の神経は人間の体内にあります。神経が体外に出て延長する、ということはありません。
しかし、信号の相互変換ができ、生体と非生体の接続が可能になると、遠隔化が可能になる、ということです。

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例えば、右手は常に自分の体に付属していて、見える位置にありますが、遠隔化が可能になると自分の体に付属する必要もなく、近距離にある必要もなく、一つだけとも限らなくなるのです。
実際に医師による遠隔操作で行う手術の実験がはじまっています。

▼危険な作業、単純作業も遠隔操作で楽々、外骨格グローブ「ExoHand」

それで、多分ですが抵抗のある全身のサイボーグ化よりも先に起きると考えられるのは、非破壊型のネットワークデバイスの装着です。
イメージとしては頭で念じただけでネットに接続できるデバイスです。
スマホが小さくなり、ついには持ち歩かなくてもいいようになる、と言えば分かりやすいかもしれません。

体は傷つけずにネットワークデバイスを装着するというのは既に研究されています。
メガネやコンタクトを使い実現します。映し出される情報はリアルと融合した拡張現実です。
例えば、山を見れば山の名前が表示され、雑草を見れば雑草の名前が表示される、といった具合です。

無手順で念じただけでネットに接続できるようになると、単純な「知識」というのはあまり意味を持たなくなります。
クイズとか計算といったものは、ネットから答えをダウンロードすればいいからです。

つまり、脳に記憶を溜め込んでおく必要すらなくなります。
一過性のものについてはネットワーク上においておくことで、記憶とか暗記といったことをしなくても、常に必要なものを必要なだけ得ることができます。
知識のクラウド化が可能になるのです。
理論的にはマニュアルも必要なくなりビギナーはいなくなります。

知識が均一化する、ということは「人間らしさ」もフラットになるということです。
知ったかぶりは意味がなくなるということです。
知識が均一化すると当然のことながらマーケティング手法も変わってきます。
脳に直接的にマーケティングを仕掛けるニューロンマーケティングです。
そのうち衝動買いはニューロンマーケティングによる精神汚染か否か? という議論が出てくるかもしれません。

我々の社会は過去の20年間の変化とは比べ物にならない変化を迎えようとしています。サイボーグ化とサイバネ・ディバイドの話は続報があればまた紹介します。

【引用元 goo イメージサムネイル】

【goo Imgae】

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