シンギュラリティと大失業時代 その12 光速を超えた量子テレポーテーション

ところで、量子テレポーテーションですが、これがまた面白いのです。
量子は観察すると瞬時に状態が確定する、という話は前回しましたが、不思議なのは複数の量子にも同じことが起きることです。
これは「」もしくは「量子の絡み合い」と呼ばれています。

例えば、2つの量子を1回の操作で同時に発生させると、この2つの量子は1つの波動関数で表すことができます。
同じ操作で同時に生成させたので、その状態も同じになる=同じ波動関数で表現できる、ということです。

ところが、2つの量子のうち一方だけ観察し状態が確定すると、不思議なことにまだ観察されていないもう1つの量子の状態もつられて確定されてしまうのです。

なぜかというと、どちらの量子も同じ波動関数で表されているため、片方の値が(観測によって)確定すると、もう片方の値も(自動的に)確定してしまうという理由です。

この理論の面白いところは、相対性理論が矛盾してしまうことにあります。
絡み合い状態にある2つの量子が、ずっと誰にも観測されずに違う方向に向かって運動し続けたと仮定すると、時間が経過するにつれ、当然ですが両者の距離はどんどん離れていきます。

しかし、どれだけ距離が離れようと、量子論に従えば、片方の量子を観測したとたん、もう片方の量子の状態も決定されることになります。

もし、両者の距離が1光年(光の速度で1年分移動した距離)離れていたとしたら、相対性理論によれば、光速よりも速いものは存在しない、ということなので、片方の量子の状態が確定してから、その情報がもう片方の量子に伝わるまで1年かかることになります。

しかし、量子論的には、片方の量子の状態が確定すると同時にもう片方の量子の状態も決まってしまうことになり、相対性理論に反した現象となるのです。

相対性理論と量子論の双方が同時には成立し得ないところから、これをEPRパラドックスと呼ばれています。
結論を書くと、アインシュタインの死後、量子論の正しさが証明されることになりました。

難しい話はさておき、量子テレポーテーションは起き得るということが次々と実験で証明されていきます。

日本では2008年5月26日にNTTと大阪大学が量子テレポーテーションを使った量子計算に成功しています。

▼テレポーテーション型量子計算を世界初実証 NTTと阪大

量子コンピュータの話に戻ります。
量子コンピュータは原理的には、通常のコンピュータが演算に利用している「」を「量子ビット」で置き換え実現します。

「量子ビット」の実現が今まで量子コンピュータを開発する課題だったのですが、量子テレポーテーションを応用することで解決することになります。

2012年10月9日には量子コンピュータの基礎理論を確立したコレージュ・ド・フランスのセルジュ・アロシュ教授と、デビッド・ワインランド博士にノーベル物理学賞が贈られています。

▼ノーベル物理学賞、米仏2氏 量子コンピューターに道

ちょっと難しい話になってしまいましたが、何が言いたいかというと、コンピュータが人間の知能を超えるシンギュラリティが起きる環境は整いつつあり、ほぼ確実に起き止められない、ということです。

2045年にはコンピュータの性能が人間の脳を超えるとは言われていますが、量子コンピュータが開発されると計算速度はもはや半導体の性能に左右されなくなり、場合によっては早まる可能性があります。

計算が一瞬で終わるからです。
シンギュラリティは大失業時代への幕開けでもあるのです。

続く。

【引用元 goo

関連記事