あなたの10年後の履歴書 その3 伴わない実体経済とデフレ

前回は、グローバル化によって起きる4つのことについて説明しました。

・フラット化
・ゼロコスト化
・ヘビータックス(重税)とタックスフリー(非課税)
・ゼロサムバースト

今回はグローバル化の問題をおおまかに説明します。

グローバル化が進むと世界中の市場が接続され広くなります。
これは市場に参加する人達が増えることを意味します。
重要なのは、市場が接続され広くなると売主が増え、製品やサービスの種類が増えるということです。

消費者側は数多くある製品やサービスを選択できる自由が与えられるのですが、多選択の不幸という問題が発生します。

例えば、2種類の商品と4種類の商品があるとします。
一般的に種類の豊富さは自由選択の拡大を意味して、良いことに思われがちなのですが、落とし穴があります。

それはなにかというと、どんなに種類があっても選択決定は都度一回だということです。ややこしいので、お金持ちだから2つまとめて買う、という話は置いておきます。

選択決定が基本的に1回だということは、選択に失敗をすると選択できる多さに比例して後悔が発生する、ということです。
後悔度については感覚なので定数化はできませんが、2種類よりも4種類の方が後悔度が高くなります。

なぜかというと、2種類の場合は、どちらか一方が選択ミスと分かれば正解は他方だと分かるからです。しかし、4種類となると残り3種類を試さなければならないため、それだけ選択の後悔度は強くなります。
4種類全て買えるだけの財力がなければ、選択の深刻度は高くなります。
コンプリートを目指してガチャガチャやカードゲームをすることを思い浮かべてみて下さい。

ところが、もしたった1種類しか選べない場合はどうかというと、唯ひとつを選べば良いから後悔も少ないと思われがちですが、少なすぎる選択肢は自由度がなく敬遠されます。
もしその選択が良くても、あとで間違いだったと気が付いたとしたら取り替えができないためです。寡占状態の商品は競争相手がいないため価格も高いかもしれません。

さらに、選択肢が多いと後悔度が増すのですが、選択肢が多すぎると今度はあきらめの気持ちとなり妥協をするようになります。
宝くじはどうせ当たらないし、当たったら良いな、ぐらいの感覚でやるものですよね。

まとめると、種類は多すぎても少なすぎてもダメ、ということになります。
しかし、世界中の市場が接続されると、種類は多すぎても少なすぎてもダメとはいっても膨大な種類となるはずです。過当競争となります。

売主側と消費者側の視点から考えてみます。
消費者側にしてみると、膨大な種類から1つを選択する基準が必要となります。いったいどこに着目して決めれば良いのかというと判断基準が必要となります。

一方、売主側は競争相手の動向と消費者側の嗜好を先読みします。
なぜかというと、売主側は必ず先に商品を用意しなければならないため、先行投資が必要だからです。最初にリスクを負う以上は、ある程度市場の動向についてを予測しておかなければなりません。

一般的に売主側は消費者側に選択してもらうために差別化をします。
もしまったく機能が同じモノしか作られなければ、差別化できるのは価格差程度しかありません。価格差で勝負すると最も低価格で販売している売主が勝つことになります。競争相手も価格引き下げに追随するので、市場全体で価格のダウンバースト(下落)が起きます。

売主側は生産コストと販売価格の差で儲けているわけですから、販売価格が下がり過ぎると儲からなくて困ります。そこで、商品に様々な機能や付加価値を付けて差別化をします。価格をあまり下げずに競争相手とは違ったことをして生き抜こうとするわけです。

こうなると、消費者側からしてみれば単純に価格だけで判断することは容易ではなくなります。価格以外に用途や機能、耐久性などといった判断基準が増えるため、市場が細分化します。

とはいっても無限に差別化と市場の細分化をできるわけではありません。
日本の高機能過ぎるといわれる家電は好例だと思います。
そんなに高機能にするなら、使わない機能を外して値段を下げて欲しいくらいです。

差別化と市場の細分化には限界があるので、もしその分野でトップシェアを誇りリードをしていても、競争相手が徐々に追随してきます。
ナンバー2、ナンバー3の企業が勉強をして徐々にシェアを奪って行くことになります。

ここでこんな疑問を唱える人がいるかもしれません。
どうして、せっかく差別化に成功して、ニッチな市場を開拓できたのに、わざわざそこに参入して競争をおっぱじめるのだろうか? と。

たまに近所のコンビニの隣や真向かいに違うコンビニができたりして、なんでわざわざそんな喧嘩をするのかと思うことがありますが、理由は単純です。
商品やサービスの差別化は無限にできますが、それを買う消費者側は有限だということです。

つまり、ある企業が「私達はこんなことをしたい!」と手を挙げても、それに賛同してくれる人達がいなければ成立しないということです。
ヒトとカネは有限なので、どこかにヒトとカネが集まると、やはりどこかでヒトとカネが足りなくなるのです。モノがあってもヒトとカネが足りなくなるのです。

鳥の巣箱を100万個作ったからといって、鳥が1万羽しかいなければ99万個の巣は無駄になるというわけです。
1枚のパイを巡って熾烈な奪い合いが起きます。

だから、ある分野で成功をすると、しばらくすればライバルが出現し、先行した企業のアドバンテージは長くは続かなくなります。
つまり、競争によって商品やサービスの機能は高まり、価格は下落します。
消費者側にとっては選択の自由が増え、かつ低価格で購入できるのでメリットがあります。毎年この繰り返しです。

消費者側にはメリットがあるといっても、それは消費をする瞬間だけのことです。消費者側が払うお金はどこから出ているのかというと、多くは会社の給料からです。会社はどんなことでお金を稼いでいるのかというと、他社との差別化なのです。

差別化ができなくなって、過当競争に陥るとその業界は停滞します。
その業界に務めている人達の給料も下がることになります。
給料が下がると消費が冷え込みます。消費が冷え込むと、安くてもっと良い物を作らなければ売れなくなります。

安くてもっと良い物を作るためには、コストを低く抑える必要があります。
すなわち人件費や材料コストを安く抑えなければなりません。
ゼロコスト化に向かうことになります。
その企業の従業員の給料は下がり、下請けは困ることになります。
良いこともあれば悪いことも起きてしまいます。全体的に見れば上がりも下がりもしないフラット(平均的)なのです。

なにが言いたいかというと、グローバル化が進むと、デフレが進むということです。
デフレーションというのは、モノを作っても売れず物価が下がることです。

では、どうしてデフレが起きるのかというと、実体が伴っていないからです。
例えば、お金の機能として面白いものとして、マイナスを扱える、というものがあります。借金とか負債はマイナスですよね。

しかし、実際には、マイナスというのは扱うことはできません。
1個のリンゴを食べたら、1個分のカロリーが減った、とかそういう話はナンセンスです。

ところが、金融や資産の中では、マイナス1個のリンゴというものが存在するのです。でも実際には、実体がないので扱えない。これが実体を伴っていないという意味です。

どうしてこれがデフレに繋がるのかというと、こんなことができるからです。
例えば、ある製品を作るために、銀行からお金を借りたとします。
100円借りたとします。その100円というのは、自分が元々持っていないものなので生産者にしてみると実体がありません。

生産者は、100円を元手に設備投資をし、製品を生産します。
生産した製品の価格はいくらするべきかというと100円では困ります。
なぜかというと、100円借りて作って100円で売ったら儲けがないからです。
銀行から100円を借りたら利子があるので、必ず返済は100円以上になります。
仮に110円にして返す約束とします。

製品価格は最低でも110円で売らなければなりません。
でもまだまだ足りません。これではプラマイゼロだからです。
自分の取り分がありません。そこで利益を上乗せします。
100円の利益としましょう。すると、販売価格は210円となります。

別段おかしくない話かもしれませんが、これを続けていくとどうなるか?
無限に価格が上昇して行くことになります。
例えば、原材料を加工して何かを作り出したり、多種多様な部品を使った複雑な機械を生産する場合、様々なメーカーとの取引があるので、中間マージンがどんどん増えていきます。
下流産業に行けば行くほど価格が高騰していくことになります。

しかし、実体経済というものがあります。
無限に価格が上昇したら、買う人がいなくなります。
安心して買える適正価格というものがあります。
製品の付加価値はどこかで妥協しなければならないし、適正価格に抑えるために人件費の安い国でアウトソーシングをするなど工夫する必要があります。
もっとも中国などは発展が著しく、人件費も高騰しており、さらに人件費の低い東南アジアの国々に外資の手が及んでいます。

例えば、日本の衣料品が圧倒的に安いのは、人件費の安い海外で生産をしているためで、国内で生産をしたら今より10倍以上の価格になります。
千円のTシャツが単純に1万円になります。

アウトソーシング以外にも適正価格に保つために、グループ化というものがあります。下請けメーカーの中間マージンを減らすために、吸収合併したり、グループ傘下に納めるなどして、一極集中させます。
時には敵対企業を買収して、ブランドを維持しつつ競争圧力を緩和させます。
巨大企業、巨大グループはこのように出来ていきます。

で、問題のデフレの原因はどこにあるかというと、初期投資に実体が必要ないことです。原点はここです。何もない状態から、信用と契約、担保というものを使い、マイナスの経済を操れるところにあるのです。

もっと簡単に言うと、お金を借りて利子を付けて返すという活動が、デフレに繋がっているのです。こう書くと、「じゃあ、オレが友達から借りた1万円もそうなのかよ?」という人がいるかもしれませんが、ちょっと違います。友達からお金を借りたぐらいは別に問題はないのです。

問題は、友達から借りたお金をさらに別の友だちに利子付きで貸した場合です。さらに、その友達が同じく友達に利子付きで貸した場合です。
これを信用取引といいますが、もし友達の友達へ延々と借金リレーをしていった場合、末端の人が持つお金は、そもそも誰のものなのか? という話です。

元は1万円で、これはまだ実体があります。しかし、信用取引をしていくと、右から左へ流すことで利子だけいただくことができます。
利子というのは、実体を伴わないのです。実体を伴わないので、借りた1万円に1万円以上の利子が付くというわけのわからないことができてしまいます。

利子だけではありません。メーカーが製品につける利益も同様です。
人件費の安い海外で製品を作り、そこに利益を上乗せてして国内で販売するというやり方は、要するに転売です。
安い所で作って、高い所で売るという転売です。

この流れも信用取引に似ています。買う人がはっきりと決まっていない状態で、先に設備投資をし、製品を作り、付加価値を付けて販売します。
製品の需要という実体がなくても無理やり供給し利鞘を稼ぐということをみんながやっています。これではいずれ実体が伴わなく成るのは当然です。
不必要なものをどんどん作り、それを買わなければみんなの生活が苦しくなる、というデフレスパイラルです。

グローバル化が進むと上記のことが加速します。
するとどうなっていくのか?

続く。

【引用元 goo イメージサムネイル】

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